470級セール開発秘話-シミュレーション編

投稿者: | 2016/08/15

リグセッティング、風速の違いによるセールシェープは大きく変化します。以前はこれを正確に予測することは不可能でしたが、この15年ほどでコンピューターのパワーは増大し、それにともなってセール・シミュレーションの技術は飛躍的に発展しました。

この技術はもともとアメリカズカップ艇のように大きな高額のセールのみに使われてきましたが、ノースセール・ジャパンはこの技術をワンデザイン・ディンギーのセールデザインにも使えるように開発してきました。その優位性をここで紹介いたします。

コンピュター・シミュレーションによりセーリング中のセールシェープ(フライングシェープ)をかなり高い精度で再現することができることができます。これはセールシェープの最適化に大変役立ちます。 しかしいくらコンピュター・シミュレーションだからといってセーリングの条件が正確にインプットされなければ正確にフライングシェープを予測することはできません。

シミュレーションには実際のセーリングと同じ、以下の条件を設定していきます。

・マストの硬さ

・リグのテンション

・スプレッダーの長さ振り角度

・サイドステー取付け位置

・シュラウド(ワイヤー)の伸び率

・トラピーズに何キロ掛かっているか

・ステップの位置

・クロスのパネルレイアウト

・セールクロスの伸び率

・メインシート

・ジブシート

・バング

・トラベラー

・カニンガム

・帆走条件 風速 アタックアングル ヒール リーウェイ ボートスピード

Wakeと圧力分布

Flow:Wakeと圧力分布

セールにかかる力のマップ

Membrain:セールにかかる力のマップ

セールシェープの変形(誇大表示)

セールシェープの変形(誇大表示)

デザインしたセールをコンピューター上でマストにセットしてこれらの条件の下、風を流すと セールに生ずる圧力と空気の流れの可視化風速に応じてセールに掛かる力を計算 クロスの伸びによるセールの変形とマストの変形 セールに生じる圧力や変形、リグの変形など、 風速に応じた正確なセールシェープとセールに出るシワの深さなどを予測できるのです。

たとえばカニンガムを引いていない時にラフに出るシワは1枚のセールを微風から強風まで適応した形を出すためには必要なのです。 カニンガムを引く量を変化させたシミュレーション結果です。

E,F-1 Minor Strain(シワの深さ)no cunningham

カニンガムなし

20mm カニンガムON

20mm カニンガムON

カニンガム40mmON

40mmカニンガムON

カニンガムのコントロールによるMinor Strain (しわの深さ) の変化。 色が薄いほど、しわのない状態。 セールに出るシワはセールのシェープに大きく影響します。シワを計算で出せなければターゲットとするセールシェープは作れないと言えます。

このシュミレーション・プログラムは実際にセーリングしているようにメイン、ジブ、バング、トラベラー、カニンガム等のコントロールラインを調節してセールがどう変化していくかも正確に画像に出せますし、リグのセッティングの変化によるセールの変化も勿論画像で確認できます。

VirtualSailing#1 VirtualSailing#2

実際のセーリングからのフィードバックをシミュレーションと比較 ヘルムスマン、クルーからの視点はもちろん、コーチボートからの視点などあらゆる視点からシミュレーション画像を見ることが可能です。 実際のセーリング中の写真と、同じセーリング状態をシミュレーションと比較をし、デザインの検証を行うことでより正確にセールシェープを再現することが可能になっています。 これによりセーラーへのデジタル化したチューニングサポートもできるようになりました。

このようにセールシミュレーションをワンデザインディンギーセールの開発に使用しているのはノースセール・ジャパンだけです。セールを真剣に開発する。その姿勢に国内はもとより海外のトップセーラーから信頼を得ています。