11月22日から26日まで、愛知県蒲郡市にあるラグナマリーナにて、第42回J/24クラス全日本選手権大会が開催されました。
「冬の蒲郡」特有の北西の風が7~25ノット吹く中、無事に7レースが実施され、全国から集まった12艇により熱戦が繰り広げられました。見事優勝はチーム『月光』最終日に見事逆転しカップを手に入れました。
出場されたチームの皆さんお疲れ様でした!
優勝チームより今大会のセーリングについてのレポートが届きました。月光チームの速さのヒントが書かれている興味深い内容となっています。下記に紹介します。
『今回のレガッタは、若手選手(松岡 嶺実、村瀬 奏斗、西村 宗至朗)が乗艇し、彼らの活躍なしには、達成することのできなかった優勝となりました。J/24はアメリカやヨーロッパを中心に世界中で乗艇されているワンデザインのキールボートです。ワンデザインボートだからこそチューニングやハンドリングを深く追求することにより、他艇よりも少しでも早く・高く走ることができます。そしてそれが、レース展開を圧倒的に有利に進めることができる重要な要素となります。(スタートを失敗すると、元も子もないですが。。。)
月光では、長年2ボート体制を取り 、North Sailsの方々のご協力・ご支援のもとチューニングやハンドリングについて様々なトライ&エラーを繰り返してきました。
今回のレガッタは、順風から強風まで幅広い風域でのレースとなりました。これらの風域を乗りこなすためには、次の3つの要素を理解し、使いこなすことができるかがポイントとなります。
①セールのチョイス
②チューニング
③ハンドリング
それぞれ解説したいと思います。
【①セールチョイス】
我々が使用しているセールの種類については、皆さんと同じ型のものを使用していると思いますので大きな差はありません。
《月光のセール》
・メインセール:FAT HEAD
・ジェノア :DX-7TT
・ジブ :SUPER ROCKET
・スピン :FR-2
J/24では、ある一定の風域を超えるとヘッドセールをジェノアからジブセール変更します。この2種類のセールを使い分けるのですが、どちらのセールでのセーリングがアドバンテージがあるかは、以下の点を複合的に考慮し、チョイスしています。
《セールチョイスの要素》
1、風速と波
2、風の強弱やシフト幅
3、ターゲットボートがどちらのセールをチョイスしているか
今回の蒲郡のように、風の強弱が激しく、シフトの振れ幅が大きい場合は、ハンドリングが難しいことやタック回数も増えるため(ジェノアはタックロスが大きい)、早いタイミングでジブセールを選択することになります。
また、レース中の風の変化に対応し、スピンをホイストした後に「ジェノア→ジブ」や「ジブ→ジェノア」にセールをチェンジすることがあります。これらについて、適切なタイミングで判断することや短時間でセールを交換するクルーワークが求められます。
複数の要素が混在する中でのセールチョイス。判断が成功することもあり、失敗することもある。だからこそ奥が深く、この点はJ/24の大醍醐味とも言える部分です。
【②チューニング】
どのセールを使用するか決まった後、我々は風速や波の状況を勘案して、チューニングを合わせます。アッパーとロアーを(21−18、24−21、27−24、29−28、29−29)からチョイスし、セットします。この点はノースセールのチューニングガイドとは少し違いがあるものの、経験上この値としています。
また、微風(約8ノット以下)と強風(約16ノット以上)の風域では、マストステップの位置を前後することで、ジェノアのサギング量及びマストベンドの量を調整しています。
マストステップを移動することで、リグのテンションを変えず、フォアステーのサギング量とマストベンドを調整し、より理想的なセールシェイプに近づけることが可能になります。
この点は何度も2ボートでセーリングテストを行い、試行錯誤しながら、作り上げてきた内容になります。
【③ハンドリング】
そして、セール&チューニングがかたまると、ようやく速く走らせるためのハンドリングとなります。
《クローズホールド》
・とにかくボートをフラットにすることを意識する。
キールを最大に活かし、横流れを抑えるために過剰なヒールは厳禁。強風を除き、ほとんど風域ではヒールを5度以下に抑えるようにしています。舵のヘルムがニュートラルになるヒールアングルで走るのでは無く、フラットまで起こした際に舵がニュートラルになるように、各コントロールロープでセール等を調整します。これによりキールを最大限活用し、横流れを防ぐことができ、他艇より登って走ることができます。(正確には他艇が横流れして、落ちている。)
ボートをフラットにキープするポイントを1つ紹介します。月光の場合、ボートをフラットにキープするため、1番から4番までのクルーは、ヒール・アンヒールに対して基本動かず、トリマーがディンギー乗りのように絶えず動いています。ヘルムスマンと会話をしながらトリマーだけが動くことで、狭い範囲のヒール幅でボートをコントロールすることが可能となります。このトリム幅を超えるヒールが入る際に、初めてドライブチームから1番から4番に動いてもらえるようオーダーが入る形となっています!
・ボートのパワー&失速を感じ、なるべくセールは引き込む(微風・強風以外)
この点は他の艇と大きく異なる点だと思いますが、クローズホールドでジェノアをとにかく可能な限り引き込んできます。(フット→リグに触れてさらに引き込む、リーチ→スプレッターに触れるまで)もちろん、セールのオーバートリムは失速を伴いますので、常に船の持つパワーとスピードを感じながら、失速直前でセールを緩めます。
イメージは、「セールは引けば登れるようになる、だから可能な限り引き込む。ただし、失速するので、失速を感じながら、止めないポイントを探り続ける!」といった感じです。
最近ではスピードメーター等も普及してきましたので、ぜひぜひ皆さんもトライしてみてください。
・トラベラーは常に上側に持ってくる
そして最後のポイントとして、トラベラーは基本流さない(1番上側)ということです。先ほど記載したように、ジェノアをなるべく引き込むため、メインセールはなるべく上側でキープしたい(スロットルを確保するため)と考えています。実際、我々は20ノットを超え、ウェザーヘルムを抑えきれない状況にならない限り、トラベラーは流しません。また、このような状況の場合でも、握り拳1個程度出す程度です。
この走らせ方が最善の方法だと確信できてはいないため、今後もトライ&エラーを繰り返し、研究していくつもりです。
最後に!
国内のJ/24ボートは減少の傾向にはありますが、ヨットの基本を学ぶには最適なクラスであり、世界中の多くセーラーに愛され、老若男女楽しむことができる素晴らしいクラスです。さらに、2023年に開催された世界選手権の優勝スキッパーはなんと67歳だそうです。
学連を卒業した方、社会人でヨットを始めたい方・再開したい方、定年された方!ぜひぜひ乗りたい気持ちを解放し、チャレンジしてみてください!
私自身41歳となりましたが、まだまだ小僧の領域!これからもチーム月光はワールドチャンピオンを目指して、North Sailsと共に進化し、チャレンジし続けたいと思います!
Never give up!Age is just number!Keep going‼︎』
月光 武居 徳真