5分でわかるヨットの知識シリーズ:#4 3Dセールについて

By | 2018/01/19

今回は、セールのお話。
セールにパネルセールと3Dセールがあるのはご存じですか?

パネルセールは、ご存じの様にパネルを組み合わせて、隣り合うパネルの重ね合わせの量(シーム)を調節して、3次元形状を作っていく製法で、セールメーキングの基本となる方法です。
それに対して、3Dセールはここ20-30年の技術で、アメリカズカップなどの最先端のレースシーンから生まれた製法です。

ここでは、ノース・セール独自のこの3D(モールド)セールを取り上げてみました。
ノースの3Dセールというのは、3DLに始まり、現在は、3Diと呼ばれる製法に移り変わっています。
パネルセールを細かく切ってつなげていけば、3次元のモールドの形に近づいていき、スムースな形状ができるのは、直感的にわかるかと思います。ただし、一つ一つのパネルを小さくすればするほど、それをつなげるシームの量が小さくなり、それだけつなげるのに精度が必要になっています。また、パネルセールは、基本的に織物(ラミネートのクロスもありますが)なので、方向性があります。普通の織物を想像してもらえばわかりますが、斜め方向に引っ張ると非常に伸びる特徴があります。これをセールで使う場合、この方向には非常に形が崩れやすくなってしまいます。この弱点を補うように開発されたのが、“3DL”と呼ばれる製法です。1990年代の初頭から使われはじめ、2007年のValenciaでのアメリカズカップで、全盛期を迎えた技術です。

NanoqR860'12

パネルセールという概念をなくし、マイラーの間にカーボン、アラミドなどの繊維を直接テンションを加えながら貼り付けて、サンドイッチにする製法です。織物の代わりに、繊維を直接並べていくので、セールの力が加わる方向がわかっているとその方向に繊維を並べることで、セールの形状変形を最小限に抑えることができると共に、不必要な方向には繊維を減らすことができるので、重さを減らしながらも変形を押さえるセールを製作することができる技術です。また、それぞれの繊維は切れ目がないため、パネルセールのようにつなぎ目での制約もなく、必要な方向に必要な量の繊維を効率的に配置することができるのが特徴です。

ここで、忘れてはいけないのは、セールの力を予測する技術です。最先端のレースで培われた、ノース独自のシミュレーション技術を使った、セールの表面の応力を予測するプログラムにより、異なった繊維配置(ヤーン・レイアウト)を比較し、用途にあったセールを提供してきました。この3DLの製法のパテントは、ノースが持っていましたが、現在は、パテントが切れて、誰でも使える技術になっています。(といっても、実際に作るとなると、なかなかハードルは高いのですが。。。。)

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さて、今回のお話はここで、終わりません。ノースでは、この3DLを使うのをやめて(一部残っていますが)、3Diという技術を使っています。この技術は、ちょうど10年程前から使われ始め、やはり、アメリカズカップから生まれてきた技術で、ボートの製造過程に非常に似てきている製法です。詳細は、ノースのWebサイトを参照していただければ、わかると思いますが、簡単に説明すると、繊維をその方向を合わせて並べ、そこに最小限の樹脂を含ませたテープを作り、そのテープを3次元のセール形状を作ったモールドの上で、セールの力がかかる方向に配置することで、セールを作っていく方法です。

3Di manufacturing at the North Sails sail loft in Minden, Nevada.

3di_internal

テープの配置には、レイヤーと呼ばれる階層があり、その中には、バテンやセールのコーナーの補強(パッチ)などのレイヤーもあり、セール内部にこのレイヤーを配することで、表面にはでこぼこのない非常にスムースなセールを作ることが可能になりました。また、テープを作る段階では、繊維の方向性が合っているため、織物に比べて樹脂量を落とすことができるため、テープの効率的な配置、樹脂量の減少により、3DL と比べても、同等の強度を持った、さらに軽いセールを作ることができるようになっています。3DLでは、マイラーのラミネートを使っていたため、どうしても、表面のマイラーのはがれ(デラミ)は避けられませんでしたが、3Diではこの問題も解消され、非常に耐久性があるセールを作ることができます。

今、レースの真っ最中ですが、世界で一番タフなレースのVolvo Ocean Raceでも全ての艇で、この3Diセールが使われており、この耐久性が証明されています。
テープの繊維には、カーボン、アラミド、ダイニーマといった、ハイテック素材のほかに、通常のクルージングセールで使われる、ダクロンを用いた素材もあり、レース艇だけでなく、クルージング艇のセールにも適した製法です。